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右手に本を持ち河原の近くを歩きながら川の光に目を向けていると睡魔というなんとも何気な魔物に脳を襲われ草はらに寝転がる。
このご時世に空を仰ぎながらまどろむ男も珍しいだろう。
「あー…」
寝てる時に死ねたらなんて幸せなんだろう。
俺はただ死ぬのが怖いだけなのかもしれない。
痛いとか死ぬとか全部自然の摂理じゃないか、自分から怪我をしに行ったり自分から死にに行くなんてそれこそ間違っている。
この青い空。
いつまで見れるんかな?
「うわ、難しそうな本」
その声とともに右手にあった本を盗られる。
「ようこんなん読めんなー、頭パンクするわ普通」
軍服姿からチラリと見えた黒い肌と暴力的な喋り方で相手が誰かがわかる。
「井本…お前訓練さぼっとっていいんか?」
「今は休憩中や
お前はよう外歩けるな、俺やったらむりやわ~」
「うそこけ、親父さんが軍の上の人やなかったらお前と俺は同じ状況やろ」
本を俺の胸に押しつけ隣に座るやつを横目にまた目を閉じようとする。
井本とは餓鬼の頃からの知り合いでで今は唯一の友達。
いや、恋人のほうが正しいのかもしれない。
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