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「何、寝とんねん」
「眠いからや」
「返答内容ふっつー……俺といれんのもあと少しかもしれんのに、ようやるなお前」
「大丈夫や、お前なら特攻隊にいかされても死なんわ」
「いや、それは無理や」
わかってんのにお前は偉いな、親父さんの顔立たせるために軍隊に入って…
「…今度はなんやねん」
「何が」
「めっちゃこっち見とったやん」
「いやー、今日もかわええなぁと思って」
「あほちゃう?」
白い歯をちらっと見せながら笑い寝転がる。
「なー」
「んー?」
「いつまで俺らは一緒にこの空みれんのかな?」
「……」
「時々無性に悲しくなるねん、
この空と
お前がなくなるのが」
俺は空に手を伸ばしながらそう言った相手に口づけをする。
「なんやねん」
「いやなんとなく」
「誰かに見られとったらどうすんねん」
「愛の逃避行しよか」
「あほや」
また笑いながら今度は俺の右手を握る。これこそ見られる確率が高いというのにかまわず何分か無言のままそれを続けた。
「そろそろ時間やー」
「…そか」
「いきたないー」
「うん」
「藤原―」
「うん」
「一人はいややー」
「うん」
「ずっと一緒おってなー」
「うん」
それだけを言うと安心したような笑顔を向けて【いってきます】といった。
【うん】としか言えなかった自分の頬を戒めの意味を含めて思いっきりつねった。
「いったぁ!!」
ひとりの叫びは周りにむなしく響いた。
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