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「あかん寝こけてもうた」
そう呟きながらとぼとぼと夜道を帰る。
訓練所の前を通るともう終わったのか人はいなかった。
「あれ?」
しかし、明かりのついた小屋(軍事室とでもいうのだろうか)をじっくり見てみると二人の影が言い争うようにして動いていた。
小屋に近づき中の話を聞くことにする。
「まだあの非国民とつるんでるんか?」
【!!】
「関係ないやろ?」
「早く縁を切れと言うとったやろ!」
「こっちは入りたくもない軍に入って兵隊やってやっとるんや、それなんにまだ俺の幸せを奪うんか?
くず親父」
鈍い音がする。
「ッ…」
「その頬の赤みが取れるまでに考えを直しとくんやな、
次は、ないで?」
ガタンと音がなり逆側にある扉から井本が出てくる、その目には涙が映りそのまま歩いて行った。
俺はまた夜道を歩きだす。
あんなに気の強い井本が涙を流なんて、しかも俺のせいで。
「何やってんだ俺…」
深く考え事をするのは何年振りだろう、戦争というくだらないものが始まってからは自分のことしか考えていなかった。
でも井本は親父さんのことも俺のことも考えていたんだ。
「しっかりせな…自分」
この空をいつか見れなくなるなんて考えは、先の未来をしっかり考えてるやつが思うことや。
もっと広くみなければ。
「うるさい虫やなー」
ふと虫の声が耳に入った。
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