ポチのおはか

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 息子は、そこを動かない。  もう日は暮れて、晩ご飯の支度も出来てるというのに、息子は、そこを動かない。  増してや、今日はカレーである。いつもならそのニオイにつられ、呼びもしないうちから食卓に姿を現して「ねえ、まだ?まだ?」としつこく聞いてくるのに。  …息子は、そこを動かない。  息子はさっきから庭の隅っこで、俺たちに背を向けるような形で体育座りをしている。  息子の視線の先には、今日妻が作った小さな山があった。山のてっぺんには、ひらべったい木の棒が刺さっていて、こう書かれていた。 『ポチのおはか』と。
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