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「……さみしくなるな」
息子の後ろに立ち、出来るだけ優しく声をかける。
息子は俺の方を振り返った。
「!?」
その顔を見て、不覚にも俺はたじろいだ。
笑っている……それも、なんとも言えない、爽やかで穏やかな、大人じみた笑顔だ。
「しようがないよ。ポチ、おじいちゃんだったもの」
事もなげに、息子は言った。
「……知ってたんだな」
「うん、最初からね。だから拾ったんだし」
俺は息子の言葉に困惑した。
「……え、だから?」
「だって、そうでしょ?おじいちゃんが死ぬまで野良犬って、可哀想じゃん。本当は、死ぬときも一緒にいてあげたかったんだけどね」
……。
……やられた。
こいつ……俺たちよりも、大人だ。
息子はポチの方に向き直り、もう一度手を合わせて言った。
「じゃあポチ、行ってきます」
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