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「いたたたた」
俺はベッドから床に落ちた気がした。
くそ、今日は朝からついてないなと思いつつ立ち上がった。
「な、なんだこれは…」
思わず声が口から漏れた。なぜこんな状況なんだ。
「なぜ、周りが草原なんだあああ」
そう叫ぶのも無理はないだろう。
俺から見えた景色は360度草原だったからな。
当然だがこの現実を受け入れられるはずもなく、頬をつねってみる。
痛い……
どうやらこれは現実であるらしく、状況を変えられるものは何もなかった。
俺はこれが夢だという希望を捨て、宛てもなく歩き始めた。
すると、一匹の見たことある生き物が現れた。
「うそだ。うそだ。うそだ。」
俺は思わず逃げた。それはその生き物が俺の疑念を確信に変えたからだ。
その生き物は「ゼロ-エミッション」お馴染みのモンスターだったのだ。
俺はゲームの中にやってきてしまったのか、と自問自答してみる。
「ん、待てよ……。まさか、俺は魔法を使えるのか?」
魔法が使えるかもしれないということに思わず笑みがこぼれる。
試す価値はありそうだ。
「ファイアーボール」
手を前に出し、大きな声をだした。
…何も起こらねぇ。
期待した俺がバカだった。
時間が経ちぐぅー、とお腹がなった。
腹減った、町を早く見つけないと餓死をしてしまう。
俺は走り出した。
RPGで草原で走るということはモンスターと遭遇しやすくなることを意味する。
「うああああああ」
つまり、モンスターに襲われやすいのである。
「ちきしょう、魔法が使えれば倒せるのにな」
ぼやいてみるが状況は変わることはない。
なんとかモンスターから逃げ切ると目の前に大きな岩が現れた。
どうやら、ここはモンスターもいないらしい。
なら、生きている間にこの岩に俺という人間がいたことを示しておこう。
俺はこの世界で死ぬことを前提に石を拾い名前を刻もうと思い切り力をいれた。
ガリッガリガリッガリ、ギィャャャャ
突然、その岩が動き始めた。
「終わった……」
岩だと思っていたものはドラゴンであることを知り、死を覚悟した。
どうやらドラゴンは石で引っかかれて腹が立っているらしく、こちらを睨み付けてくる。
「父さん、母さん、啓太(弟)、俺はここで死にます。迷惑ばかりかけてごめ…」
言い切る前にドラゴンの口から直径2メートルの火の玉が龍馬めがけて飛んできた。
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