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目の前が真っ赤になっていく。
全てを諦め俺は目を閉じた。
「グラウンドウォール」
俺の耳に遠くから女の子の声がかすかに届いた。
すると、目の前にいきなり土の壁が現れた。
「早く、こちらに来てください」
遠くから手招きをしながら叫んでいる。
俺は、その声を聞いて自分の意識を取り戻し、女の子の元へと走った。
ガラガラ、と後ろで先ほどまでの土の壁が崩れる音がする。
しかし、俺は後ろを振り返る余裕はない。
あと、もう少しで女の子のところまで行ける。
そうすればどうにかなる気がしていた。
バサッバサッバサッ、俺の聞いたこともない音がする。
俺の予想があっているなら……、最悪だ。
次第に音は大きくなり、俺の影が雲に隠れたかのように消えた。
上を見上げるとドラゴンがいた。
今度こそ人生の終わりだ。ここまで生きてる方が不思議だ。
しかし、せめて女の子だけは逃しておかないと死んでも死にきれない。
未練は残したくないという気持ちが俺にはあった。
「そこの彼女逃げ……」
叫んでいる途中、女の子の体を中心として見たこともない大きな魔法陣が現れた。
その女の子は何か呟いているのだが俺には遠くて少ししか聞き取れない。
「…………が……火の力…………焼き尽くせ」
女の子はそこで一回大きく吸い込み。
「フレイムプリズン」
女の子が手を前にかざしてそう唱えた。
すると、ドラゴンの真下の地面から炎の柱が現れ、ドラゴンを焼き尽くした。
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