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足早に近寄ってみると、やはりというか、怒声が聞こえてきた。
「いいでねぇが!コイツはオデが引き取るって決めたんだど!」
「お客さん、その子は今日入った商品なんでさ」
「オデは客でねぇ!軍人だど!」
軍服を着た熊のような男が、どこかの給仕のような格好をしたやせ細った女の子の腕を掴んで喚き散らしていた。
正式に雇えず、こういう所で買って給仕にするしかない下級貴族の人間や、頬が痩けて異様な光を発している目の男どもが、そいつのせいで遠巻きに見ているだけだ。
ここの支配人らしき小太りしている小男が1人、向かい合っているだけである。
「商品なんで、ちゃんと買っていただかないと困るんですけど」
「うるせぇ!オデは客でねぇって言ってるど!」
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