つんつるてん

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いた。 あいつはそこに立っていた。 いつものように犬を連れ、身動きひとつしない。 横を通り過ぎた。 振り返ってみる。 あいつは同じ格好で立っていた。気付いた感じもない。 「そうか……やっぱり臭いだったんだ」 あいつは何者なのかよくわからないが、これではっきりした。 ホルマリンの臭いに反応していたんだ。 おれはなんだか可笑しくなった。 もう実習は無い。 ホルマリンの臭いもない。 よって、あいつに追われることはないんだ。 明日からは晴れて冬休みだ。 休みを満喫できる。 気分がよかった。 途中、友人の部屋に行こうとしたが、留守のようなので帰って寝ることにした。 明日は友人を誘って服でも買いに行こう……。 朝、チャイムの音で目が覚めた。 ドアを開けると、2人の男が立っていた。 「警察ですが」 「……何ですか?」 「あなた、この方の友人だそうですね?」 警察は友人の写真を取り出した。 聞くと、おれの友人は下の階の部屋で冷たくなっていたそうだ。 死後数日たっている。 なぜか、数日しかたっていないのに腐乱していた。 部屋はカギがかかっていて、自殺の疑いが強いという。 「一応、確認をお願いしたいのですが」 警察に言われ、おれは死体の確認をさせられた。
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