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友人の顔は膨れ上がって、生前の面影は無い。
「彼、だと思います……たぶん」
つんと鼻をつく臭い……これが死臭というものなのかと思った。
「臭いが出てもね。気付かないことの方が多いんですよ。まあ一般の方は死臭なんて嗅いだことありませんものね」
警察が言ったとおり、おれにもわからなかった。
おかしいとは思っていたが、まさか友人がこのような姿になっていたなんて。
「何か変わったことはありませんでしたか?」
おれはふと、彼の部屋のドアを見た。
よく見ないとわからないくらいの凹みと、血のような跡、そして郵便受けには犬の毛のような……。
ドンッ……ズルズルズル
ドンッ……ズルズルズル
あいつが友人の部屋のドアに犬を投げつけている映像が浮かんだ。
投げつけ、たぐりよせ、投げつけ、たぐりよせ……。
ズルズルズルズルズ……
警察の事情聴取が終わって、おれは部屋に引きこもっていた。
もう出かける気も失せていた。
ここ数日、友人を見ていなかった。あいつは友人を殺したのだろうか。
そんなこと出来るはずない。そう信じたい。
でもあのドアの凹み……あいつは友人の部屋にやってきていた。
あいつは、同じ大学の友人を自殺にまで追い込んだんだ。
次は、おれだ。
……バリンッ
いきなり窓が割れた。
何か投げ込まれた。
部屋の外からだ。
見ると、小型犬がぐったりしている。
「わん」
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