つんつるてん

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犬の散歩中らしく、手づなを引いて、犬が用を足し終えるのを待っている。 「こんな寒い中、大変だな」 と思った。 ふと見ると、その人はズボンの丈が合っていない。 スネが丸見えで寒そうだ。 紺のダウンジャケットを着て、ファー付きのフードを頭まで被っている。 その人の横を通り過ぎたときだった。 「わん」 犬の声とも、人の声ともとれないような声。 むしろ音だったのかもしれない。 少し驚いて、おれは振り向いた。 穴だった。 黒い穴が3つ。 そいつの顔であろう場所にぽっかりあいている。 穴のような目と、穴のような口……。 背筋に悪寒が走った。 猛スピードで自転車をこいだ。 川沿いをひたすら走り、1つの橋を超え、2つ目の橋を超え……何か嫌な予感がした。 振り返ると、追いかけてきている。 距離は遠のいたが、そのまま夢中でペダルをこいだ。 アパートに着くころには、そいつはいなくなっていた。
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