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次の日、大学の友人に昨晩の出来事を話した。
「そりゃあお前、つんつるてんだよ」
「つんつるてん?」
妖怪のたぐいかと思ったが、どうも違うらしい。
友人が言うには、ズボンの丈が合わずにスネが丸見えのことを「つんつるてん」というらしい。
単なる見間違いだ、と軽くあしらわれた。
その次の夜だった。
そいつはまた現れた。
実習で遅くなり、川沿いを帰っていたとき……そいつは同じ場所、同じ格好で立っていた。
ズボンの丈が合っていない……。
「わん」
そいつから逃げるために、思い切りペダルをこいだ。
幸いヤツはおれの自転車についてこれない。
「わん。わん。わん」
犬のような、人のような。
低い男の声。
逃げ切るまで止むことはなかった。
そんなことがあってからというもの、おれは川沿いの道を通らなくなった。
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