つんつるてん

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ある日、前に話した友人と一緒に帰ることになった。 彼も同じアパートで、帰る方向は同じである。 彼が 「近道を通ろう」 と言い出して、おれはイヤイヤ川沿いの道を行く羽目になった。 「ここの道、あいつが出るから嫌なんだよ」 「ああ、例のつんつるてんか。何かされたのか?」 「いや……追いかけられただけだけど」 友人が居たせいなのか、1人でないと現れないのか、あいつは姿を現すことはなかった。 数日後の夜のことだった。 またあいつが現れた。 飲み会の帰り、少し酔っていて川沿いの道を使ってしまったのだ。 いつもの場所、いつもの服装……顔はフードで見えない。 ただいつもと違うのは、あいつが自転車に乗っていたこと。 犬を連れて、あいつは橋の向こうからこいできた。 「わん」 夢中でこいだ。 こいだ。 でも今度は違う。 あいつは自転車に乗っている。 振り向くと目の前にあいつの顔があった。 白い肌、作り物のような肌にぽっかりとあいた穴3つ。 こいでもこいでも距離は遠のかない。 「わん。わん。わん」 あいつの連れている犬はスピードについていけずに引きずられている。 「わん。わん。わん。わん。わん。わん。わん」 もう酔いなんてとっくに醒めてしまった。 (このまま家に着くと、あいつに居場所がバレる!) そう思ってとっさに道を曲がり、公園の便所へ逃げ込んだ。 洋式便所にカギをかけ、閉じこもると、すぐにあいつがやってきた。
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