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家に帰り、今までのことを思い起こしてみた。
なぜあいつはおれを狙うのだろう?
今日着ていた服は、白のダウンだった。
黒のダウンじゃないのに、あいつは現れた。
色は関係ないのだろうか?
だとすると、他に何があるというのか。
あいつが現れたとき、おれがしていた共通のこと……共通の……。
「あ、もしかして……解剖」
思い当たった。
あいつが現れた日、おれはいつも解剖の実習があった。
解剖室は、いつも検体のホルマリンの臭いが漂っている。
3、4時間もそこにいると、体にホルマリンの臭いが染み付くのだ。
もしかして、あいつはその臭いに反応したんじゃないだろうか?
色ではなく、臭いに。
そう、まるで犬のように……。
黒を着ていたのは、解剖で汚れが目立たないから着ていただけのことだった。
次の日、おれは実習テストを終え、川沿いの道を通ってみることにした。
その日はテストだけだったので解剖室には入っていない。
ホルマリンの臭いはしないはずだ。
注意しながらいつもの場所へ向かう。
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