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俺はナツキを抱き締めた。ナツキは、俺のことをもう好きではない。別に好きな人が出来たことを知っている。でも、抱き締めた。
ナツキは小さい頃からバレエが大好きな子だったそうだ。教室に通い、たくさんたくさん練習したらしい。ひたむきな練習は実を結び、かなりの腕前を持っている。先生にも期待されているとの話だった。
「私は一生バレエがしたい。バレエと結婚するの」
にっこり笑って言っていたこともある。
そのナツキの右足が、太ももから吹き飛んでいる。
俺は泣いた。ありえないくらい泣いた。泣いても泣いても止まらない。泣いている俺を、ナツキは黙って見て、頭を撫でた。
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