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………。
「良い子やろ?」
しばらく沈黙が続いていた僕らの空気を優しくフーッと吹き飛ばすようにナツキちゃんは言った。
「良い子…なんやろーね……たぶん…。」
僕は、建物に見え隠れしながら帰っていく一瀬の姿を見ながら言った。
「そっか。さっきの二人のやり取り見とったらそんなもんか…。」
普段の彼女の性格なら、「「たぶん…」ってなん?良い子やとに!それとにイジメてぇ!!!」と、くってかかられててもおかしくなかった。
でも、その時の彼女はそれをせず、物悲しげに同じように小さくなっていた一瀬の姿を見ていた。
……。
…………。
僕はその言葉に答えず、心の中にできた小さな疑問を聞けずに黙ったままだった。
「ねぇ……」
再び、二人の間の空間にナツキちゃんの声が通る。
「なん?」
いつの間にか並んで歩き始めていた僕ら二人。
歩みを止めぬまま、僕は彼女を横目で見ながら言った。
ナツキちゃんは前を向いたままだった。
………。
自分から言ったものの、ナツキちゃんは何かをためらい次の言葉を切り出さなかった。
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