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落胆しながら教室に戻ると、次の教科の先生がすでに来ていた。
「図書委員で…。」
そう言うと、先生は頷いて当たり前の様に授業にはいった。
僕はノロノロと自分の席に座る。
黒板に向かう先生の後ろで、ちらほら顔を上げ同じ視線を授業に間に合ったもう一人の図書委員に向けていた。
一瀬は視線を気にしてないような、でも視線が怖いような、ただひたすらに先生の話を聞いていた。
(図書委員のくせに!)
(お前も図書委員だろ!)
(何もしないんだな!)
そんな陰口を叩かれている様な淀んだ空気の中で、一心不乱に授業を聞く一瀬。
図書委員の仕事を何から何までしているのは、一瀬ただ一人。
でも、図書室に来ない他のクラスメートはその事を知らない…。
自分の事ではないのに、さも自分がされたかのように苛立ちや悪意を無言でぶつけている人達。
『噂』は恐い。
それは大勢で一人を吊るし上げ、噂の真偽よりも自分が上に立ってる優越感を味わう為のものだと思う。
そんな風に思っている自分も一瀬を苦しめている。
結局は他のクラスメートと同じだった。
彼女に対して申し訳なさでいっぱいになっても、僕はずっと顔を上げる事が出来ずにいた。
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