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「ごめん。」
彼女より早く玄関を抜け、待っていた僕に彼女は言った。
それに答えず、僕は校門の方へと歩き出した。
ザーッ……ザーッ……ザーッ
車の音を横で聴きながら、僕らは国道沿いの歩道を並んで歩いた。
「元気しと…る?」
僕の間の抜けた変な切り出しに、笑顔を見せた彼女は答えた。
「元気ばい。新しい友達も出来たしねー。」
「そっか。」
僕はそれ以上は何も言わなかった。
と、いうより何も聞けなかった。
言葉を無くした二人の歩数だけが数を刻む。
「…めんね…。」
「ん?」
突然の彼女の言葉をうまく聞き取れなかった僕は聞き直した。
「ごめんね。って言ったと…。」
「何で謝ると?」
「う~ん。何か…いろいろとさぁ。」
「……。いろいろかぁ。いろいろあったよねー。」
「ねー。なんか濃かったよねー。」
「ハハハッッ……。」
「ハハハッッ……。」
いつの間にか二人で笑いあっていた。
笑うしかなかったのかもしれない。
「こっちこそ、なんかごめん。」
ふと言った僕の言葉を正面を見据えたまま彼女は言った。
「なんで?」
「う~ん。言っとかんばかなと…。」
「そーねぇ~。てか会話、変くない?」
「変かかも。」
「ハハハッッ……。」
「ハハハッッ……。」
二人で始めに笑った乾いた笑いとは違い、今の笑いは二人の間の刺を少しずつゆっくりと溶かしていくように思えた。
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