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再び歩き出した僕は、彼女からある程度距離をおいて歩いた。
相変わらずの車の音とたまに聞こえる自転車のブレーキの音。
聞こえる度に後ろの自転車をかわしながら歩くと、いつの間にか橋のところまで来ていた。
ふと前を見ると、彼女は橋の中程まで進んでいた。
(ん?)
夕暮れまではまだ少しかかる今の季節と時間帯。
夏に向け徐々に力を増す太陽の陽が女の子を照らす。
色薄い短い髪が風に吹かれ、フワリッとなびいて揺れている。
陽に照らされ、さらに茶色に見えた髪。
(横着っかのー!)
いつだったか、そう思った。
でも今は、ただただ綺麗に見えた。
茶色の髪の女の子は、前を歩く彼女に声をかけられ振り向いた。
(ドッッックン!!)
一度だけ大きく脈打った心臓は、胸の奥でこれ以上ないというぐらい小さく縮まる。
息もいつの間にか止まっていた。
女の子のあどけない笑顔は彼女に向けられ、親しげに話す姿は一般の女子と何も変わりなくて、どこでも見る光景だ。
でも僕は何となく違和感を感じた。
いつも俯いてばかりいて、まともに顔を見たのは二、三度。
だから一瀬の中学生として当たり前な光景を異質に感じつつも、なぜか少し嬉しくて二人を黙って見ていた。
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