春風

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  ビクッッ!!! 一瀬の上げかけた手が止まり、跳びはねる様に半歩後ろに下がった。 図書室の時同様、何気ない僕の行動にすらビクビクしてる一瀬を見て、反射的に口に出した。 「ご…ごめん……。」 そんな二人の関係を知らない彼女は、ふて腐れて言ったように聞こえたのか、軽蔑するかのように細くした横目で僕を見た。 (はいはい……。) 一方的な圧力に、僕は何かどーでもよくなっていった。 (謝ればよかっちゃろ!!) 心の中で逆ギレし、僕は一瀬に向かって深々と頭を下げた。 「えー、この度はまことにすみませんでした。避けようと親切にしてもらった事に対して、大変失礼な態度と言葉でした。」 「本当にすみませんでしたぁ~。」 「ちょっ!!トモアキー!!!」 その声に驚き顔を上げる。 ふざけた謝罪に苛立ちを感じた彼女が、僕に詰め寄ろうとしたときだった。 「いえいえ、こちらこそすみません。」 そう言いながら、一瀬が 深々と頭を下げた。 ……。 ………。 ……………。 一瞬何が起こったのか分からず、二人は頭を下げたままの一瀬を唖然と見ていた。
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