695人が本棚に入れています
本棚に追加
「14日の帰りはなかったよ。って気付かんかっただけかもしれんけど……。」
一瀬が優しく言った。
「気にせんで。たまたま思い出しただけやし。」
彼女は一瀬にニコッと笑った。
「あ!!!」
僕は自分でも知らぬ間に声が出ていた。
「どうしたと?」
いきなりの僕の声に不機嫌そうに彼女が言った。
「何もなか。」
ユキナに別れを告げた日。
僕はその日の事を思い出した。
甘くてほろ苦い、雪だるまに入っていたあのチョコレートの味を…。
「何?」
僕の異変に気付いた彼女は、問い詰める様に言った。
「何もなかって!」
「てか、話し変わるけど…。今年のバレンタインって誰かにやった?」
無理矢理話しを変えようと、ポンッと頭に浮かんだ事をそのまま言っていた。
「何?嫌味?」
彼女は僕を睨みながら言った。
「あっ……。ごめん。」
僕は素直に謝った。
「トモタアキは今年、ユキナに突き返したとよねぇ~!」
嫌味たっぷりの言葉を返され、ズキンッと胸が痛んだ。
「ごめん…。」
本気で凹んでいる顔だったのだろう。彼女はそんな僕を見て、慌てて謝った。
最初のコメントを投稿しよう!