春風

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  「14日の帰りはなかったよ。って気付かんかっただけかもしれんけど……。」 一瀬が優しく言った。 「気にせんで。たまたま思い出しただけやし。」 彼女は一瀬にニコッと笑った。 「あ!!!」 僕は自分でも知らぬ間に声が出ていた。 「どうしたと?」 いきなりの僕の声に不機嫌そうに彼女が言った。 「何もなか。」 ユキナに別れを告げた日。 僕はその日の事を思い出した。 甘くてほろ苦い、雪だるまに入っていたあのチョコレートの味を…。 「何?」 僕の異変に気付いた彼女は、問い詰める様に言った。 「何もなかって!」 「てか、話し変わるけど…。今年のバレンタインって誰かにやった?」 無理矢理話しを変えようと、ポンッと頭に浮かんだ事をそのまま言っていた。 「何?嫌味?」 彼女は僕を睨みながら言った。 「あっ……。ごめん。」 僕は素直に謝った。 「トモタアキは今年、ユキナに突き返したとよねぇ~!」 嫌味たっぷりの言葉を返され、ズキンッと胸が痛んだ。 「ごめん…。」 本気で凹んでいる顔だったのだろう。彼女はそんな僕を見て、慌てて謝った。
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