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「一瀬の……こと?…」
そう言った僕の頭にさっきの物悲しげなナツキちゃんの顔が浮かんだ。
「うん……」
歩調がほんの少し遅くなり、かるく俯くようにして彼女は言った。
「ミユキちゃんって……。クラスで浮いとったりする?」
言葉を選ぶようにゆっくり僕に聞いてきた。
「まぁ…ね…。浮いてるっちゃ浮いてる……」
「いや…浮いて……。なんて言うかぁ…みんなとは距離を置いとっちゃなかとかなとは…思う…かな……。」
僕も言葉を選びながら言っていた。
なぜなら、一瀬に対するナツキちゃんの態度は好意的に見えたから。
クラスの一瀬に対するけっして好意的でない態度。むしろ悪意の塊の雰囲気と視線。
それを知られたくなかったし、それを知って悲しむナツキちゃんの顔も見たくなかった。
「そっか…」
そう言った彼女の一言。
そして…
「ありがとう…」
その言葉を聞いたとき、僕はナツキちゃんに自分の心を見透かされてるのを知った。
「ん?う…ん……」
そういうと、自分がまだまだ子供なんだと感じて、なにも言えなくなった。
並んで歩く二人の距離は遠い。
手を伸ばせば触れる事ができる距離なはずなのに…
それ以上に、大人になる成長速度というか子供っぽい自分との心の差というか、それを感じてしまい声を出すことすら戸惑っていた。
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