女心

6/29
前へ
/242ページ
次へ
  ……。 「たまには良くない?」 (ドックンッ……) 少し拗ねたような態度で僕に言った彼女を見て、何故か心臓が鳴った。 ………。 …………。 「なん?おごってくれんと?」 「ケチかねぇーー!!」 無言のまま立ち尽くしていた僕にナツキちゃんは言った。 怒ったような口振りなのに、彼女の雰囲気はそれとは違い、明るく無邪気に軽く笑みも見せていた。 「ハァァ……」 聞こえるように僕はため息をつき。 それでも、嫌な顔を見せずに言った。 「よかよ。たまにはね……」 「やったッ!!」 ナツキちゃんは嬉しそうに笑った。 子供がお菓子をねだるような感じに思え、少しだけ自分の方が大人になった感覚だった。 二人でナツキちゃん家のある小道の向かい側の道に入る。 少し歩いて、保育園の所にある自販機まで来た。 迎えの時間まではまだあるらしく、時折聞こえる子供たちの声以外は静かだった。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

695人が本棚に入れています
本棚に追加