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……。
「たまには良くない?」
(ドックンッ……)
少し拗ねたような態度で僕に言った彼女を見て、何故か心臓が鳴った。
………。
…………。
「なん?おごってくれんと?」
「ケチかねぇーー!!」
無言のまま立ち尽くしていた僕にナツキちゃんは言った。
怒ったような口振りなのに、彼女の雰囲気はそれとは違い、明るく無邪気に軽く笑みも見せていた。
「ハァァ……」
聞こえるように僕はため息をつき。
それでも、嫌な顔を見せずに言った。
「よかよ。たまにはね……」
「やったッ!!」
ナツキちゃんは嬉しそうに笑った。
子供がお菓子をねだるような感じに思え、少しだけ自分の方が大人になった感覚だった。
二人でナツキちゃん家のある小道の向かい側の道に入る。
少し歩いて、保育園の所にある自販機まで来た。
迎えの時間まではまだあるらしく、時折聞こえる子供たちの声以外は静かだった。
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