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「なんで?」
彼女の気持ちを知らず知らずのうちに汲み取り、見ないように前を向きなおして一口飲んでから言った。
たぶん、言おうとしてる事がわかっていた。
それでも……。いや…だから、普通に返したつもりだった。
「ユキナの…事……」
(やっぱり……)
「なんで?池田が謝ることじゃないやろ?」
お互い、別々の所を見ながら会話していた。
「てか、謝らんばとは……おいの方じゃなか?」
「なんで?」
彼女も、一口飲んでから落ち着いた声で言った。
「いや…せっかく紹介してくれたとに……別れたし…。」
「それに…池田にも酷い事言ったしね……。」
やっと言えた。ずっと言いたかった一言……
「ううん。酷い事言ったとは私の方たい?!」
「なんも知らんかったとに、トモアキだけ責めてさ……悪者にして……」
「ごめんね。私のせいで…」
飲みかけの缶をギュッと握りしめ、膝に顎を乗せたまま目の前を焦点も合わせず見ているようだった。
「うんにゃ。本当に池田のせいじゃなかよ……」
(「私が紹介したせいで……」)
後悔しているナツキちゃんに、僕はそう言うので精一杯だった。
僕以上に責任を感じているナツキちゃんの言葉が感情と共に胸に突き刺さる。そして、僕の言葉とは重みが違うと感じていた。
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