紙切れ、舞う、落ちる。

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「で、天使。神様とやらに靴ぐらい買って貰えよ。神様も不景気か?」 紙幣を一枚、また一枚と逃がしながら訊ねる。 この男、若いのに浮浪者か?不景気って怖いな。 まあ、世間から見れば俺の今の行動の方がよっぽど怖いか。 「人に取られているんだ。そのお陰で、返してもらえるまで帰れない」 男はそう言いながら空を指差した。 「現代の天使は靴が羽か。というより、取られるって何したんだよ」 俺は軽く溜め息を吐いた後、手にしていた封筒を男に投げた。 男は受け取らず、自分の肩にぶつかってから足元に落ちた封筒を眺めるだけ。かなり厚い封筒だったので、地面に重たい音を発しながら着地した。 「ソレで羽でも買ってこいよ。やる」 俺はそう言った後、錆び付いた高い柵に手を掛け、よじ登った。指に金網が食い込み痛みが走る。 柵を登り終えると、反対側の足場に一気に飛び降りた。 着地の際に崩れた体制を整えた後、ビルの下を眺める。 明日の朝刊に載るかな? まあ、俺の死なんてどうでもいい事か。 「飛び降りか」 俺のすぐ後ろから男の声。 振りかえると、柵越しに男が封筒を俺に向けて差し出していた。 「どうせなら、派手に逝けよ。朝刊とやらに載りたいんだろ?」 …読心術か? 「…お前が人じゃないって事はよく分かったよ。あと、天使でもないな」 人に死を勧める天使が居てたまるか。
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