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「お前がどんな風に俺の事を思っていても構わないさ。お前は今から死ぬんだし」
「…そうだな、その通りだ」
俺が頷くと、男は封筒を持った右腕を振りかぶり、それを柵の上に投げた。封筒は放物線を描き、柵を越え、俺の手に納まる。
「最後に話したのが、訳の分からない自称【天使】かぁ。どうせなら、べっぴんな女神に会いたかったな」
封筒から中身を出す。封筒は風に飛ばされる。
「案外ファンタジーだな、お前の頭ん中。女神とか」
ファンタジーの塊(かたまり)のお前に言われたくないよ。
札束の帯を破り取る。
「俺がファンタジーか?」
心を読むなよ。
「天使なんだろ?」
「一言もそんな事言ってねぇけどな。神の使いだって」
「ソレを天使って言うんだよ。お前は悪魔に近いがな」
俺はまたビルの下を覗いた。たしか十五階建て。高さは…取り敢えず、即死出来る高さだな。
「天使、お前は俺のお迎え役か?」
冷たい風が頬を刺す。
「違う。そもそも、俺はどこにお前をお迎えすればいいのか知らねぇよ」
「なんだそりゃ」
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