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「なぁ、俺って不幸か?」
今から到着するであろう場所を見下ろしながら、後ろの天使に訪ねた。
「俺が『お前は不幸じゃない』って言ったら、それは嘘でもあり、本当でもあるな」
「そうか…」
右手に二百万、左手に二百万。
準備万端。
「明日の朝刊が楽しみだ」
俺はそう呟き、何の躊躇(ためら)いもなくビルの外に右足を出した。
身体が前のめりに倒れていく。
左足が、コンクリートで出来た足場から離れる。
落ちる。
落ちる。
落ちる。
俺は、舞う事は無いんだな。紙切れでさえ風と遊べたのに。
ああ、そろそろ手を離さないと。地面にぶつかってからじゃ、なんか地味だ。
最期に見た物が、アスファルトの地面にへばり付いたガムだなんて、俺にピッタリじゃないか。
なあ?
お前もそう思うだろ?
天使。
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