プロローグ

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あ、解凍が終わったみたい。 ここがあたしの新しい家なんだ。 仏壇のお線香みたいな匂いがする。 手に感覚が出てきた。 床は、畳みたい。 あたしは、ゆっくり目を開けた。 「おぉ、起動した起動した!!」 あたしの目の前にいるのは、眼鏡をかけた、いかにもオタクそうな女の子だった。 「はじめまして、重音テト」 女の子は私の手をとり、ブンブンと無理矢理握手する。 テンションたけぇな……。 「えーっと……貴女が、マスターですか?」 「マスター?……良いねぇ!!なんか良い響きじゃん!!」 ……え゙? 嫌な予感がするんですが。 「あ、あの……もしかして、VOCALOIDは……」 「え?初めてだよ?」 Σな……っ。 「なんで初心者なのに、ダウンロードしたんですか!?あたしを扱うには、結構スキル要るって、知らないんですか!?」 「そーなの?」 マスターはきょとんとして答えた。 馬鹿だこの人……。 ……実に、馬鹿だ……。 「いや、だって、オトンにバレないようにしなきゃなんなかったしさ。私も本当はKAITOとかルカとかが欲しかったんだけど……」 ひでぇこの人。 本人を目の前にサラリと「他の子が良かった」発言しやがった。 ていうか、こんな人だったら、他のボーカロイドも使いこなせないような気がする……。 「まぁまぁ、これから慣れていきゃあ大丈夫だよ!私元吹部だしさ、何とかなるよ!!」 「はぁ……」 自分で言うなよ。 ……先が思いやられるなぁ……。 どうにかこの人が上達してくれれば良いけど……。 すぐに「アンインストール~♪アンインストール~♪」なんて事にならないだろうね……? うわ……なりそうで怖い……。
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