ある日、それは突然に。

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─── それは確か今から丁度4年くらい前だったかな? 俺は白ワインで有名なカリョスの街に来ていた。 噂によれば、なんでもワインを作る前のブドウの品種改良に成功らしく、味そのままに小ぶりの実が沢山つくブドウが出来たらしい。 と言ってもそのブドウ、かなり酸っぱさが強く、甘さがあまり感じられない代物で、そのまま食べるのは地元の人でもしないらしい。 『じゃあその実もワインに?』って疑問が残るヤツも出てくると思うが、元のブドウの味と同じなんだから、わざわざ品種改良する必要がない。 ならどうして?って思うだろうが、話によればそのブドウは干しブドウにするらしい。 当時、長期保存に優れ、栄養価も高いソレは、今まで外国の輸入に頼るしかなく、国のお偉方の旅のお供としてしか流通していなかった超高級品で、一介の旅人でしかない俺は当然食べたことがなかった。 ところが最近カリョスの町でソレが比較的安価で手に入ると聞き、好奇心に胸膨らませカリョスの町に行く事にしたのだ。
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