ある日、それは突然に。

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知ってる情報と違っている。俺はワケが分からず、どういうことか聞いてみた。 「あんちゃん、そんなことも知らないのかい?」 それから気のいいハゲヅラは料理を作るのも忘れ、最近の干しブドウ事情を話してくれた。 要約すると、7年ほど前に干しブドウ用の品種の苗を輸入して南の地方で一斉に生産が始まったらしい。 ところがこの町はブドウに情熱をかける男たちが多いらしく、『他と同じではつまらん』と新種を研究し、丁度去年、その新種が出来て、新しく作り始めたんだとか。 その当時俺はまだ旅人になって3年ほどで日が浅く、土地勘のある出身地の北地方ばかり旅をしていた。 元々、南北の行き来の少ないこの国では情報が遅く間違っていていてもおかしくない。 なるほどと納得していると、どういう経緯か、やれ向こうの農家のタムグは町長の娘とできてるだ、やれ酒屋に勤めてるランドは最近、妙に羽振りが良く店の金をくすねてるんじゃねーのかなど、実にムダな身内話までサービスしてくれた。 いや~、スッキリした反動と腹が減ってるのと、ムダ話が長いのとが相まって、マジで殺気が湧いたね。
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