第六章 化 物

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「だあっ、畜生、効いちゃいねえ!あの野郎、深刻に人間やめてやがる!」 「……深刻にって、どういう表現よ……」 思わず突っ込んだ綾乃に、和麻は吠えた。 「呑気に見物してんじゃねえ!お前が前衛だ、とっとと前出てそのでかい松明(たいまつ)でぶん殴れ!」 「で……」 (でかい松明―――?) 恐れ多くも神凪の神宝に対して、何たる言い草か―――! 「あんた、あとで絶対話しつけるからねっ!」 綾乃の剣幕にかまわず、和麻はひらひらと手を振って急かした。 「いいから早よ行け『猫の手』」 視線に一段と激しい殺気を込めつつも、綾乃は率直に前に出る。彼女の怒りを反映してか、炎雷覇は今まで以上に眩く輝いていた。 (姉様、頑張って………) 煉は一心に二人の勝利を祈っていた。 祈ることしかできなかった。自分には、あの戦いに加わるだけの『力』がない。 おのれの無力さを噛み締めながら、煉は血を吐くように呟いた。 「僕に、僕にもっと力があったら……」 「そんなモン……後でもどうにでもなる……。それよりも、燐と爺だ……」 そう言うと怜翠は後ろへ向き直り、辺りに視線を向けた。 「爺、とっとと出て来い………」
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