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先に異変に気がついたのはアレンだった。
「ジョシュア……なんだかヒゲがピリピリするニャ」
アレンが毛を逆立て辺りを警戒する。
確かに殺気のようなものが辺りに満ちている。
「うん……嫌な予感がする。急ごう」
洞穴を出て下り道に差し掛かる岩壁の角を回り込んだ時だった。
『そいつ』はそこにいた。
まず目に入ったのは特徴的な前足と頭。挿し絵で見たリオレウスなどの飛竜種とはまったく似つかない。口にはズラリと牙が並び、それは真紅に染まっている。
――血だ
ジョシュアがそう理解する前に全身がすくんでしまっていた。
本能が逃げろと叫んでいるが足は頑として動かない。
『逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ』
刹那、『そいつ』が雄叫びをあげた。
『グガアァァァアアッ!』
『狩る者』の咆哮がジョシュアの全身を刺し貫く。
――動く
恐怖の針が振り切れたようだ。凍りついていた身体が少しだが言うことを聞く。
『ヤバい。アレン……アレンは?』
振り返ると恐怖で凍りついたアレンがいた。その小さな体は『そいつ』の眼光に射竦められて小刻みに震えている。
『グァァアアアッ!』
雄叫びをあげながら『そいつ』はこちらに突っ込んで来た。
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