第1章~邂逅~

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「く……そっ……」  疾い。雪の上だというのになんて速さだ。  一歩ずつ後ずさるジョシュアとの距離を一気に詰めてくる。 「ええいっ」 『そいつ』が体当たりをしてくる瞬間、ジョシュアはアレンを抱き抱えて横っ飛びに回避していた。 『そいつ』は避けられると思わなかったらしく、大きく体勢を崩している。  ジョシュアは素早く立ち上がりアレンに指示を出す。 「アレン、よく聞くんだ。 ポッケ村に行って救援を呼んできてくれ。俺が奴の気を引く。 このタイミングで、お前の足なら走り抜けられる。」 「で、でも……ジョシュアは……」 「なに、助けが来るまでくらいなら大丈夫だ。 だから急いで!」 「……わかったニャ!」  立ち上がった『そいつ』は走り抜けるアレンに狙いを定める。……が 「お前の相手はこっちだ!トカゲ野郎!」  ジョシュアが悪態をつきながらペイントボールを顔面に投げつける。 『そいつ』の顔面にピンク色のペイント液が付着し、独特の臭いが漂う。  臭いに怒ったのか、悪態が聞こえたのか。とにかく『そいつ』は攻撃対象をこちらに変えてくれたようだ。 「さてさて、これからどうするか…」  自慢じゃないが、まったく勝てる気がしない。いやむしろ、救援が来るまでに死ねる自信もある。  あんなのから一人で逃げ切れる訳もない。  だかアレンだけでも助かったならそれでいいとも思う。  ならばせめて…… 「悪ぃ……アリシア……」  ジョシュアは震える腕に力を込めて、背負った太刀『鉄刀』を抜き放つ。  白く硬い鋼の刀身は雪の照り返しを受けて紅に輝いていた。
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