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「で?その仕事ってのは?」
風呂からあがり、気絶していた奴を文字通り叩き起こし、本題に入った。
「いたたた…マイ サン痛いじゃないか…。」
「喧しい。自業自得だ。」
「うう…いつも、つれないなぁ…。泣くよ?」
「泣いてもいいから、本題に入れ。」
一時、中年男のさめざめとした泣き声が響く。
「ぐすっ…実はな、これは三王と私からの依頼なんだよ。」
おおっ?珍しくまともな顔して喋っているな。
「実はここ最近、若い美形の男が大量に精気を吸われ、病院に運ばれるといったことが多く起こっていてな。こちらで調べたところ夢魔によるものらしいという事がわかったんだ。」
夢魔か…確か、女性版をサキュバス、男性版をインキュバスといい、共に寝ている異性を襲い、精気を奪うとされている。サキュバスの素顔は醜いといわれるが、夢の中では美しく、男性はその誘惑から逃れられない。インキュバスは女性を妊娠させることも可能だが自身は精液を持たず、時折サキュバスに変身して男性を襲い、そこで精液を手に入れるといわれている…だったか?
「夢魔に男か…ということはサキュバスの方の仕業か…。」
「あ…いや…それがな…病院に運ばれた人達の話しによると…インキュバスのようなんだなぁ…。」
…………………………。
時が凍る。
「…何だって?」
閑話休題
「チッ…何故、俺が好き好んで変態夢魔を自ら探しに行かないとならない…。」
あの後、あの男を朝食を食べるため部屋から追い出し(泣きながら出て行ったが)、午前中から夢魔探しを行うことにした。
ああ、ちなみに今まで勤めていた所は退職届が出されていて、少しだが退職金も出ている。
そうそう、今更だが、俺には特殊な体質がある。簡単に言えば
『人外の者から異常に好意を持たれる』
…である。
正直、厄介な体質だ。
今までに何回死にかけたか…過剰な好意は相手を殺す。ウンディーネとサラマンダーが争いをはじめた時は、水死体や焼死体になっていなかったのは奇跡といえる。
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