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「おーい!京に行った歳から文が来たぞー!」
ある晴れた秋の日。
土方さんのお姉さんの夫である彦五郎さんが、私が働く試衛館へとやって来た。
「彦五郎さん!お久しぶりです!」
私はここで、女中のようなことをしている。
例えば、送られてきた文を取りに行くのも、私の役目。
総司さんたちが京に行ってしまってからも、私はここで仕事を続けている。
「お、由果ちゃん久しぶりー。また綺麗になったね」
はい、これはお土産、と彦五郎さんは大福を差し出す。
「ありがとうございます!」
「一人分しかないからね、誰もいないところで食べるんだよ」
と、彦五郎さんは小声で言う。
「はい、分かりました」
と笑顔で答える。
「じゃ、俺はこれで」
と彦五郎さんは帰ろうとする。
「え、もう帰っちゃうんですか?お茶一杯ぐらい飲んでいったらどうですか?」
と私は止めたが、彼はまだ仕事があるからと帰っていった。
私も、一度履いた下駄を脱ぎ、中へと入っていった。
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