21365人が本棚に入れています
本棚に追加
「みちるちゃんは、どうして笑わないの?」
ドキっとした。
でも……同類なら気付いてもおかしくはない。
「そうですか? いつも笑顔を心掛けているつもりなんですが……気をつけますね」
私は社長ににっこりと微笑んだ。
「ほら、それ。笑ってるけど、笑ってない」
社長のその言葉にカチンときた。
「社長に言われたくありません」
「ん? どうして?」
「社長だって作り笑いじゃないですか」
社長は私の意外な突っ込みに驚いたのか、それとも見透かされて驚いたのか、目を見開いて私を見つめた。
「そうか……そうかもな、癖になってたのかもなぁ」
「癖……?」
「そう、昔は南以外には本当の自分を見せなかったからね。みちるちゃんの本当の顔、見てもいい?」
「私……の……?」
「そう」
社長はそう言って、あの時千波ちゃんに見せた笑顔で私を見つめ、両手を私の頬に添えた。
そして唐突に、唇を重ねてきたのだ。
何が起きたのかわからず呆然とする私を後目に、社長は私の唇をついばみ始めた。
「ちょ……やめて下さいっ!!」
私は社長を突き飛ばし、唇を拭いながらギッと睨んだ。
最初のコメントを投稿しよう!