第3話

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「あ…いや……悪い……」 聞き返した唯瀬の声と共に我に返ると、不思議そうに小さく首を傾げる唯瀬の顔が出迎えた。 「あぁー…うん。約束するよ。でも、それはいいだろ?」 と、俺は差し出された小指に目をやり、指切りの必要性を否定した。 「あっ…!ごめん!つい癖で…。なんだか椎名君とはずっと昔からの知り合いのような感じがしちゃって…」 と、唯瀬はハニカミながら差し出した指を引っ込め、照れたように笑った。 “なんなんだ……” 俺は思わず眉間にシワを寄せて、そんな唯瀬をまじまじと見つめる。 明らかに他人なのだとわかっていても、ふとした唯瀬の姿に、美海を連想させられる……いや…美海がそこにいると錯覚してしまう。 その背格好…。 鼻にかかる高い声…。 語尾を上げる柔らかい物腰…。 小首を傾けて伺う姿…。 そして、約束の度に指切りをせがむところまで…。 本当に、そのどれをとっても美海に瓜二つだった。 唯瀬……俺はたった今したばかりの約束を守れる自信がない……。 こんなにも…美海を感じてしまう唯瀬に……これ以上、近づきたくない……。近づけない……。 俺はもう2度と“あいつ”を思い出したくはないんだ…。     ……美海……  最愛で……最期の……人…   ……俺の血を分けた……    ……唯一無二の……    ……双子の“妹”…… .
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