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「仮定法は、学術以外には適用しないんでな」
「正直に答えてよ」
「まず、出会いすらないだろうな」
「どういう意味?」
「君と知り合うには、当然敷島さんとの関係が必要だ。だが、それは今の彼女が気まぐれで訪れた、普段なら立ち寄ることもないレストランがきっかけだった」
「つまり、どうあって恋人同士にはなれない、ってことね」
中野は再びそっぽを向いて、溜息をついた。
しばらく頬杖をついて考えると、思い出したように語り掛けた。
「ねぇ、高城さん。恋って一体何かしら?」
「難しい質問だな。今度は恋愛の意義を問う気かい」
「真面目に答えてよ」
予期せぬ問いかけへわざとらしく困惑して見せる高城に、中野が抗議する。
それから、少し恥ずかしげな表情になって、声を弱めて続けた。
「あたし、今まで深く考えたことが無くてさ。あなたなら、何か貴重な意見をくれると思って」
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