第一章 展覧会

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「実際のところ、あれは実に妙案だったよ、高城君。いや、今回のお披露目は、君の手柄だといっても過言じゃない」 「データを集めて、屁理屈こねていただけさ。本当の功労者は、それをうまくプロダクトに昇華させた、敷島さんだ」 「いやいや。コストをかけずに、尚且つターゲット層のニーズや使用実績の調査を行うため、大学の研究パイプを利用するという手段なんて、考えもつかなった。それどころか、我々のような企業の人間が数人集まって数ヶ月かけて導き出すような結論を、君はたった一人で、ほんの数週間で弾き出してしまうんだ。恐れ入ったよ」 無表情だった高城は、僅かに口元に笑みを浮かべ、謙遜するように答えた。 「アメリカじゃ、普通にやっていることさ。大学生は、調査結果の検証に企業利益の概念を持ち込まない。仮説と結果の乖離に頭を悩ませる点は同じだが、事実は事実として受け止める」 「全く以って、だな」
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