第七章 水澱

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「お前の本心など、とっくに見え透いているんだ。善人ぶって近づいて、他人の不幸を利用しやがるクソッタレだ。 お前は悲劇のヒロインで、地獄へ付き添ってくれる恋人をでっち上げたいんだからな。それがお前の本心だ。このろくでなしの偽善者め」 「違う…それは違う…あたしは、そんなんじゃない」 次第に殴られた頬に痛みが広がってくると、それが飛びかけた意識を引き戻し、そして彼の言葉が深く突き刺さってきた。 それでも彼女は、涙を溢れさせながら、弁明した。
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