第七章 水澱

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彼女の訴えを聞いていた高城は手に握るペーパーナイフを眺め、敷島は複雑な思いで放り投げた辞令書を拾い上げた。 「そうかもしれないな」 高城は嗚咽を漏らす中野に近づくと、彼女の横に胡坐をかいて並んで座った。 敢えて目線を彼女に向けず、正面のどこか部屋の一角をぼんやり見つめながら、彼は続けた。 「だが、どうしても君の話はつじつまが合わない。いや、君自身がよく理解していないのだろう」 中野は涙に濡れた目を、すぐ横の高城の横顔へと向けた。 彼は傍らの女性を気に介さず、分析結果を述べるように淡々と告げる。
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