第七章 水澱

17/20
前へ
/90ページ
次へ
「今まで、あんたが敷島さんに求愛する機会なんて、その気になれば何度でもあったはずだ。それがなぜ、今になってここまで行動的になったのだ?」 「……」 「本当は以前のように、仲の良い上司と部下の関係で、あんたは十分満足していたのではないのかい」 「……」 「あんたを動かしたのは、大人の恋なんてもんじゃない。嫉妬さ。あんたは俺に、嫉妬したのさ。それが全ての始まりだ」 中野は全てに返事をしなかったが、高城は意に介さなかった。 彼女が何を胸中に抱いているのか、彼にはよく理解できていたからだ。 そして無言でいることは、それ自体が彼女の返答なのだ。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加