第八章 恋の謎

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クリスマス・イブを迎えたその日の午後、高城はいつもと変わらずに行き着けの喫茶店で休息をしていた。 半年前に海外の出版社へ注文したものの、現地の運送会社が労働ストライキを起こしていた影響で、海を越えて彼の手に渡ってくるまで、酷く時間がかかった一冊を、彼は丹念に読んでいた。 「今日は非番なのかい?」 彼は、自分の座るテーブルに手をかけた女性に、事も無げに告げた。 「有給休暇が溜まっていてね。ちょっと消費しないと来年に繰り越せないのよ」 業務のときのスーツではなく、私服に身を包んだ中野が、向かい合うように席に座りながら答えた。 そこへ、彼女が注文したコーヒーとベーグルが運ばれてきた。
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