第八章 恋の謎

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「前に伝えた後、また酷く口論したとのことだ。今までの互いの関係について、それぞれ言い分が積もっていたようだからな。そう簡単に納得しあうことは、難しいだろう」 高城もまだ暖かいカフェラテを少し口へ運び、問題の進捗を報告した。 「だが、昨日の話によると、いい方向に進んでいるようだ。互いに面子を守っていることが、子供にとって不幸であることを認識しあったからだ。次の図工の時間で、娘さんが自分たちを描いてくれるためには、自分たちがどうあるべきかを、ようやく理解したんだ。あの様子なら、あと二回は衝突を免れないだろうが、年明けにはオシドリ夫婦になっていることだろう」 「そうなんだ……」 少し、名残惜しいように頷いた。 確かに敷島主任が家庭の問題を解決していくことは喜ばしいことでもあるが、一度は真剣な恋までたどり着いた相手が、遠いところへ去ってしまうようで寂しさを覚えずにもいられなかった。 クリスマスだというのに、独り身のまま華やかな街並みに躍り出たことも、そんな彼女が抱く心の隙間を広げていた。
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