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泥の中を転がる白い白い影。しかしその白も、気がつけば汚い色に染まっていた。
映画の様なセピアの世界、その真ん中に白い影は回転を止めて、更にその白を減らして止まった。少年だった。
少年は再び立ち上がろうとする。しかしその胸に、泥の玉が当たり、バランスを崩した少年は無様に泥の海へ飛沫を上げて尻餅を突いた。
泥まみれの少年、それを高みから見下ろす7、8人の影が有った。逆光のせいか、顔は全く見えない……。
「化け物」
少年を見下ろす影の1つがそう叫んだ。それが始まりだった。少年へ向かって影達は、罵詈雑言と、泥や石を浴びせた。
1つの影、恐らく少女と思われるそれが、脚で蹴り上げた土砂が、少年の顔にかかり、遂に少年は力尽きた様に泥の海へ横たわった……。
それでも彼へのありとあらゆる罵声と、石や土やらの猛攻は、終わる事は無かった……。
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