―陽向屋―

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ゆきこは顔を真っ赤にして口をパクパクと動かした。素で言っている総司は、自分が何を言ったのか分かっていない。 それを分かっていたが、顔を赤らめずにはいられなかった。 ゆ「…ありがとうございます?…ですか?」 総「はい」 あぁ…やっぱりこの人には適わないなぁ… 本当に…さっきまで落ち込んでいた気持ちが今はもう、元に戻ってる。 この人の行動、言葉一つで全てが左右される。 総司さん。初めて人を好きになることを知った、この時代で、 この時代は、いつ死ぬのかも分からない。いつ別れが来るのか、明日かもしれないし、今この瞬間かも知れない。 この気持ちに気付いた時、気持ちは自分の心の奥底にずっと沈めておこうと思った。 悲しくて、苦しくて、何度も悩んだ。泣きたくなって、胸が張り裂けそうな、我慢出来ないような痛みが続いた。 それでも、逢わなかったらとは思わない。後悔なんてしない。 ゆ「総司さん」 総「はい?」 ゆ「…ありがとうございます。全部、何から何まで…」 感謝の気持ちが全部伝わって欲しい。 本当に、いくら感謝しても、しきれない。見ず知らずの私を、暖かく迎えてくれた。優しさを暖かさを、誰もくれなかったものを、簡単に与えてくれた。 総「?…何言ってるんですか。でも…私こそありがとうございます」 二人は照れたように笑い合って、手を繋ぎ陽向屋に向かった。 総司もゆきこには感謝していた。 近藤や、土方達が居ればそれで良かった。だが、ゆきこが来てから大事なモノが増えた。 自分のことで精一杯な筈なのに、他の人の痛みを察してしまう。いつからか、そんな少女から目が離せなくなっていた。 総「…まだ早いですから、また寄り道していきませんか?」 ゆ「はい。よろしくお願いします!」 .
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