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「ん!美味しぃ!」
「そぉ?良かったわ」
一口食べた瞬間、あんこの甘みが口いっぱいに広がった。甘すぎず、でも丁度いい甘さ。もちもちの団子はあんこと良く合っていて、柔らかすぎず、固すぎず…丁度いい固さだった。
「菖蒲さんすごぉい!」
「ふふ…まだあるから沢山食べていってね?」
昼過ぎ頃、光陽は菖蒲の家から出た。その手には母へのお土産を持って。
「光陽ちゃーん!」
後ろを振り返ると、光陽と同い年くらいの子供たちがいた。子供たちは光陽に駆け寄ってきた。
「光陽ちゃん!一緒に遊ぼう!」
「え…でも…」
「少しくらいいいじゃん!」
まだまだ遊び盛りな光陽はその誘いに心を揺らした。いくら母を心配でも、この誘いに勝てる程、光陽の心は強くなかった。
「いいよ!じゃあちょっと待ってて!」
光陽は走って、自分の家に行った。家の戸を静かに開けて、母がいる部屋に行くと母はまだ寝ていた。光陽は母の布団の横にお土産の団子を置いて、家から出た。
「お待たせー!行こー!」
家を出ると子供たちが待っていた。光陽は子供たちと一緒に遊びに行った。
お寺の境内でケンケンパ、ケンケンパ…と声が響く。
「なぁなぁ、かくれんぼしよーよ!」
「いーよ!いくよー、ジャンケンポン!」
「あー美代ちゃんが鬼だぁ!」
「みんな隠れろーー!」
誰かの声で、みんながいっせいに散った。
光陽は大木の後ろに隠れた。
「あれぇ?光陽ちゃんも此処ぉ?」
「黎くん。うん」
隣にいたのは、黎くん。家が隣の仲良しさん。黎くんは木の陰からそっと顔をのぞかせて目を瞑っている美代ちゃんを見た。
「ねぇ光陽ちゃん」
「なぁに?黎くん」
「あ、あのね…「おっ黎に、光陽ちゃん」…」
黎くんの話しを途中で遮って、現れたのはガキ大将のような存在の茅くん。頼りになるお兄ちゃん的な存在。みんなからはちーくん、と呼ばれてる。
「ちーくん。ちーくんも此処に隠れるの?」
「おぉ。黎?どーした?」
黎くんを見ると、少し不機嫌そうにむくれていた。どーしたの?と、訪ねようとしたとき、
「あー!ちーくんと黎くん、光陽ちゃん、見ぃつけた!」
木の陰からひょこっと顔を出したのは美代ちゃん。美代ちゃんの出現で、黎くんの顔はもとに戻った。
「あーあ、見つかっちゃった」
「ちーくんがうるさいからだぞ!」
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