1416人が本棚に入れています
本棚に追加
「総司、なるべく傷に影響が無いよう抱きかかえてこい」
「了解です」
近藤が先に部屋を出て行った。土方が部屋から出ようとしたとき、後ろを振り返った。
「お前ら、近藤さんに見つからないで良かったな」
土方は二人の手を見てニヤリと笑った。二人はその指摘に顔を真っ赤にして、手を離した。土方はそれを見て、ケラケラ笑いながら部屋を出て行った。
「……それじゃあ、行きましょうか」
総司はそっと布団を退かしてゆきこの背を支えながら上半身だけ起き上がらせた。
そして、ゆきこの腕を自分の首に回して、ゆきこの膝の裏と背中に腕をまわして、ヒョイと持ち上げた。
「きゃっ」
「ゆきこさん。傷は大丈夫ですか?なるべく負担が掛からないようにしているんですが…」
「あ、はい」
意外と高い…ゆきこは無意識のうちに首に回している腕の力を強めた。ズキズキと痛む身体に顔をしかめると、総司が心配そうにゆきこを伺った。
「大丈夫ですか?痛くなったら言って下さい」
「…はい。ありがとうございます」
怖い。怖いけど、この人は何かが違う気がする。何が違うかは分からない。でも、信じても大丈夫なのかもしれない。
.
最初のコメントを投稿しよう!