―空と光陽―

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「お父様…」 父は、血で濡れた手で光陽の頬に手を当てて笑った。口からは血が溢れてくる。光陽の頬には、涙が溢れている。 「すまない…光陽…」 そう言って、父は目を閉じた。頬にあてられた手が力を無くして、落ちた。 光陽が父の身体を揺らしても、もう目が覚めることは無かった。光陽は涙をグシグシと拭くと母に向き直った。 「お母様…」 髪は乱れて、白い肌は至るところが青紫色に腫れ上がり、投げ出された手はぐったりとしていて動かなかった。 「どうして…?」 光陽の問いに答える者は居なかった。 ただ、いきなり失った家族に心が締め付けられて、母を殺した父に怒りだけが込み上げてきた。 「ッ……」 どうして…?なんで…?どうしてこんなことになったの? そのまま光陽は気を失った。 目を開けると見慣れない天井が目に入った。 襖が開いて菖蒲が入ってきた。菖蒲は光陽が起きているのを見ると駆け寄ってきて抱き締めた。 「ごめんねぇ…ごめんねっ…」 「菖蒲さん…」 そうだ…お父様、お母様。大好きな二人はどうなったの…? 私はどのくらい眠っていたんだろう…? 「あの…菖蒲さん…」 「んっ?なにっ?」 「お父様とお母様は?」 そう言った瞬間、抱き締めていた腕の力が強まった。その表情は悲しげに歪んでいた。なんとなく、答えは分かっていた。 「ごめ、ん…なさい…私が行ったときは、もう…」 あぁ…やっぱり… 大好きな二人はもう居ないんだ… 心の中がスッカラカンだ…どうしてだろう…涙が出ない… なんで? 「菖蒲さん…涙が出ない…」 「!……」 「菖蒲さん。私に名を頂戴?」 自分でも、何を言ってるか実感出来なかった。でも、勝手に言葉が紡がれていた。頭が正常に動いていないと思う… 「菖蒲さん…私に名を下さい…」 「…でも、あなたには光陽という名が…」 「いいんです…」 .
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