―空と光陽―

8/8
前へ
/592ページ
次へ
光陽の表情に、菖蒲は決意した。そして昔、光陽が産まれたときに聞いた、姉の台詞を思い出した。 “光陽ってね、光と陽って書くでしょ?二つとも、空から出てくるでしょ?だから空にしようか迷ったの…。でもね、陽の光のように誰かを均等に照らしてくれる、そんな子になって欲しいの…” そうだ… 「なら…空なんてどうかしら?」 「そ、ら?」 菖蒲の言葉に光陽はコテンと首を傾げた。菖蒲はそんな空を抱き締めて、先程思い出した姉の台詞を光陽に聞かせた。 まだ幼い光陽は、大きくなったら忘れているかもしれない。 でも、教えておきたかった。姉がどれほど光陽を愛していたか、どれだけ大切にしていたか… 「あなたはこれから、空よ」 「う、ん…」 「私があなたのお母様になるから…」 姉が残していった、大切な宝物を守っていこう。もう、守れないのは嫌だから… 私は、その日から空になった。 どんな人でも、均等に見守っていけるような、包み込んでいけるような、そんな母の願いのような人になりたい… .
/592ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1416人が本棚に入れています
本棚に追加