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光陽の表情に、菖蒲は決意した。そして昔、光陽が産まれたときに聞いた、姉の台詞を思い出した。
“光陽ってね、光と陽って書くでしょ?二つとも、空から出てくるでしょ?だから空にしようか迷ったの…。でもね、陽の光のように誰かを均等に照らしてくれる、そんな子になって欲しいの…”
そうだ…
「なら…空なんてどうかしら?」
「そ、ら?」
菖蒲の言葉に光陽はコテンと首を傾げた。菖蒲はそんな空を抱き締めて、先程思い出した姉の台詞を光陽に聞かせた。
まだ幼い光陽は、大きくなったら忘れているかもしれない。
でも、教えておきたかった。姉がどれほど光陽を愛していたか、どれだけ大切にしていたか…
「あなたはこれから、空よ」
「う、ん…」
「私があなたのお母様になるから…」
姉が残していった、大切な宝物を守っていこう。もう、守れないのは嫌だから…
私は、その日から空になった。
どんな人でも、均等に見守っていけるような、包み込んでいけるような、そんな母の願いのような人になりたい…
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